私は言語訓練をはじめる前に、必ず伝えることがあります。
「わからないときは、わからないと言っていいんだよ。」
巡回先の園での子どもたちの姿を見て、このことを1番に教えてあげなくてはいけなかったと感じたからです。訓練の場でも療育の場でも周囲の大人は子どもが困っているとすぐ気づくことができましたが、もっと大きな集団では大人の目が届きにくい場面というのはあるもので、そういうときに子ども自身がSOSをだせるかどうか、ということは生きやすさに直結するくらい大切なことなのだと教えられました。当時の私は、わからないことは恥ずかしいことではない、間違えたっていい、大人だってわからないことはいっぱいあるし間違えることもある、そういうことを伝えきれていませんでした。この一件以降、「わからない」「おしえて」と伝えたら助けてくれる人がいるということを体験として知ってもらえるように、訓練のたびに、ことばで文字で絵でサインで子どもの表現できる方法で子ども自身が使えるように取り組んできました。この記事を読んでくださっている保護者の方がおられましたら、助けを求める姿を子どもに見せ、わからないことは恥ずかしいことではない、ということを日頃から伝えてあげてほしい、そう願っています。
『STのつぶやき』というカテゴリーでの記事は、一人の専門士として、そして、一人の親として、心のなかにあるものをポツリポツリとつぶやいています。過去を振り返ってみて、あの方法でよかったと思うこともあれば、もっといいやり方があったかもしれないとやるせない気持ちを抱えているものもあります。そのような出来事を分析した個人の考えを書いています。